両校交流戦、秋の陣~後編~

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『南砦、制圧完了。被害は軽度。進攻を続行します。』 「おう、ご苦労様。」 通信で入るレティスの言葉に返事をして、再び眠りに入ろうとするアレン。 時刻は昼前。 昇りきろうとする太陽が会議室を照らしていた。 「暇だなぁ……」 「そうですね………」 アレンの呟きにちゃんと返事をくれるのはミーア。 エリアはもう完全に眠っている。 「せめて敵も進攻してくれば俺たちも動けるのにぁ……」 「……平和なのはいいことですよ。訓練でも人を傷つけるのはちょっと………」 「……確かにな………」 実際、アレンもまだ意図的に敵の生徒を殺してはいない。 攻撃手段を奪い、拳や蹴りで戦闘不能にしている。 練習用の木刀とは違う、鋼で作られた人を殺すための凶器。 人に向けて初めてわかった、命を奪う恐怖。 「もし………現実の世界で戦争なんて起きたら………」 「………どうなるんだろうな……」 再びボーッとする2人。 快晴の空から差し込む日光が体を心地よく温める。 その穏やかな空気を切り裂く、伝令の叫び声が聞こえる。 「敵発見!場所は真ん中の橋だ!数は50人を越えている!!」 「なっ……本当に進攻してきたか!みんな迎撃用意だ!」 アレンの命令で砦の周りから生徒が北上する。 「北砦!橋に敵襲だ!」 『こっちも確認した!今すぐ防衛に動くよ!』 ロビンが通信で素早く返答する。 「アレンさん………」 「ミーア、エリアと一緒にここに残っててくれ。」 「はい、お気をつけて。」 不安そうなミーアに笑いかけ、アレンは急いで地上へ下りた。 「アレン!」 「ヴァイスか!どうだ!?」 「大体みんな北上した!僕らも!」 「ああ、走るぞ!」 久々の再会を喜ぶ暇もなく、2人は走り出した。 「アレン、今言うのは場違いかもしれないけど……」 「ん?どうした?」 森を駆ける道中、ヴァイスが口を開く。 「黒い髪の………マリカって女の子に会ったんだ。その子がアレンと決闘したいって言ってた。」 「黒い髪か……わかった、覚えておく。」 2人は足を速める。
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