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橋の架かる開けた場所に到着すると、もう戦闘は始まっていた。
見たところ戦力に差はほとんどない。
あとは指揮の優劣が勝敗を分けるだろう。
「くっ……始まってるな。」
アレンは剣を抜き、敵を見据える。
今は訓練で、擬似の戦闘だと自分に言い聞かせながら突っ込んだ。
構えられた槍を弾き、足元を切り払う。
地面に転がる生徒には止めを刺すことはできず、一歩後退する。
すぐに横から飛ぶ魔法を避け、距離を詰めると拳を突き上げた。
2人の生徒があっという間にやられ、敵の生徒は呆気にとられていたが、すぐにアレンのバングルを見て目標に定め、攻撃を開始した。
「ととと!」
何とか避けるアレン。
その場に数本の矢が飛ぶ。
真っ直ぐに飛んだ矢は、敵生徒の腕や足を貫く。
「大丈夫かい?アレン君!」
「ああ、ありがとう!」
ロビンが木の上から弓を構えている。
同じようにロビンの隊の生徒は木から狙撃をしているらしい。
正確な矢が次々に敵生徒を貫いていった。
「森に潜伏している可能性もある!君の隊で見てきてくれないかい?」
「よし、任せろ!」
アレンは周りの生徒に指示を出し、森の中に分け入った。
「ぼ、僕1人だったら何もできないんじゃあ………」
1人で森に入ったはいいが、どうすることもできずにうろうろするヴァイス。
偶然にもそういう生徒に限って伏兵を発見してしまう。
「……うわぁ……見つけちゃったよ………どうしよう………」
茂みに隠れているつもりなのだろうが、後ろから回ったヴァイスには丸見えだった。
迷ったあげく、ヴァイスはいつもの大きな杖を持ち、後ろから忍び寄った。
「う、うう動かないでください!!」
「……!そんな、後ろだって!?」
大きな杖を突き付けられ、抵抗することなく両手を挙げる生徒。
その声に、綺麗な黒髪に、背後からでもわかる大きな胸に、ヴァイスは落胆の声を漏らした。
「ま、マリカさん………」
「ん、その声は……」
突き付けられていた杖が離れたのを感じ、マリカが振り返る。
「お、ヴァイス君だね!昨日ぶり!」
「……う、うん。」
明らかに場違いな、まるで親友と再会したような嬉しそうなマリカの声に、力の抜けたヴァイスはさらに脱力した。
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