両校交流戦、秋の陣~後編~

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マリカが静かに立ち上がる。 その表情は緊張に満ちていた。 「……初めまして、アレン君。」 「君がヴァイスの言っていた………」 茂みから出たアレン。 マリカをじっと見つめ、真剣な顔で言う。 「……俺と決闘をしたいとか言ってたな。」 アレンは握った剣をマリカに向けた。 その動作だけでマリカは後ずさる。 「……受けて……もらえるのかな?」 「もちろん。手加減は一切しない。ヴァイス、下がっててくれ。」 「………うん。」 ヴァイスが下がったのを確認し、思い出したようにマリカが剣を抜く。 両手に1本づつ、双剣を構え、アレンを負けずに睨み返した。 「行くぞっ!」 「……!!」 間合いを詰めたアレン。 慌てて剣を振り、接近するアレンを回避するマリカ。 お互いに一分の隙も見せず、一定の間合いを保ちながら切り結ぶ。 力で勝るアレンだが、手数の多いマリカに攻めきることができない。 一方のマリカも隙のないアレンに一切の攻撃が通用しない。 「……くっ……一撃一撃が重い………」 マリカの頬に汗が伝う。 両手をフルに使ってやっと同格の戦い。 一瞬でも気を抜いた方が刻まれることになりそうだ。 「………いい……腕だな!」 「ありがとう。」 鍔ぜり合いになり、アレンがマリカの剣を弾く。 「っ!」 「はっ!」 隙を見せたマリカに一歩で迫るアレン。 慌てて出したマリカの剣はアレンの目前をかすめ、空を切る。 対して、アレンの剣は右胴、左肩、右腕と続けざまに3本、太刀筋を入れた。 「あっ……うぅ……」 「……どうだ?」 致命傷とはいかないまでも、動きを封じる程度の傷にはなった。 膝で立ち、流血する右胴を抑えるマリカ。 震えながらも左手の剣を支えに立ち上がる。 「……まだ……やれる!」 「………はぁっ!!」 立ち上がるマリカに容赦なく剣撃が飛ぶ。 片腕でさばけるはずもなく、マリカの剣は空高く弾け飛んだ。 「………はっ……ははっ………僕の……負けだね……」 「いい……腕だったぞ。攻め崩すのに………苦労した。」 アレンの頬に一筋の血が流れる。 踏み込んだ時に頬を切られたらしい。 息も切れ、額には汗が浮かぶ。 「はぁ……なんか、スッキリしたよ………君は……やっぱり強かった。」 苦しそうにアレンを見上げる。 その顔は切なげに笑っていた。 アレンはためらいながら剣を振り上げる。 止めの一撃を覚悟し、マリカは目を閉じた。
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