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「アレン、待って!!」
ヴァイスが2人の間に入る。
予想をしていたのか、アレンは剣をゆっくり下ろした。
「………勝負は終わったんでしょ?だったらもういいじゃないか!」
「……このまま瀕死のこいつを放っておけば、誰かが止めを刺すだろう。だったら俺がここで………それに、これは訓練だ。」
「訓練でも、何でも、殺さなくていい人を殺すのはおかしいでしょ!」
ヴァイスは身じろぎもせずに立ちはだかる。
必死なヴァイスに、アレンも辛そうに顔を背けた。
「………俺だって……こんなことはしたくないけど………」
ヴァイスの言う通り、ここでマリカに止めを刺すことに何の意味もない。
「……ヴァイス君………ありがとう………でもね、アレン君の……言ってることが、正しいと思う………」
息も絶え絶えなマリカがヴァイスの肩に手を置く。
「どうせ……この傷じゃ、戦線に復帰するのは………無理だっ……ごふっ!」
盛大に血を吐くマリカ。
整わない息のまま、マリカは優しく笑う。
「だから、ここで……終わらせてくれた方が………」
「マリカさん………」
ヴァイスは言葉を失い、苦しそうなマリカを支えた。
「………だったら、さっさと自分で死ねばいいじゃないか。」
マリカの後ろの茂みから誰かが歩いてくる。
「だ、誰だ!?」
「……ヨディル。ミセアの生徒だ。………退け。」
冷ややかな笑いを浮かべながらヴァイスを蹴り飛ばし、手に持った剣を引く。
「や、やめっ………」
ヴァイスが慌てて止めようとするが、間に合わなかった。
ヨディルと名乗った生徒の剣が真っ直ぐにマリカの胸を貫いた。
「………っ……」
声さえ出ず、マリカはがっくりと両手を下げた。
足を当て、蹴るようにマリカから剣を抜くヨディル。
支えを失ったマリカの体は簡単に地に伏せた。
「………さて、そこのエース。」
剣に着いた血を払いながら、アレンに笑いかけるヨディル。
その腕に同じくエースのバングルが鈍く光る。
「俺とも勝負をしてもらおう。こっちは余裕がないんでね。」
「余裕がない?」
「そうだ。そちらの進攻が思ったより速い。さっさとここらを抑えて城を攻め落としたいんだ。」
どうやらレティスの進攻は成功しているらしい。
だったらここで負けるわけにはいかない。
アレンは下ろした剣を構え直した。
しかし、そのアレンの前に立つ人物がいた。
「ヴァイス……?」
「…………………」
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