両校交流戦、秋の陣~後編~

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「………アレン、行って。」 「は?……何言って………」 「巻き込むかもしれないから。行って。」 ヴァイスが俯きながら呟く。 わけもわからずアレンが混乱していると、ヴァイスがゆっくりと顔を上げた。 「……お前………」 「早く!!」 怒りの炎が灯った目は、ヨディルを見据えている。 いつもの穏和な笑顔はそこにない。 「………わ、わかった。」 アレンが森に消えていく。 「……逃がすと思ったか?」 ヨディルが笑いながら後を追うように歩く。 ヴァイスには目もくれない。 「待て。」 ヴァイスの鈴のような声がヨディルを引き止める。 「……一般生徒に用はない。用があるのは……」 横目で見たヨディルが固まる。 その顔に先ほどの余裕は微塵もない。 いつか作り出した、アレンの名を学園に広めた、巨大なゴーレムがヨディルを見下ろしていた。 「……なっ……これを……1人で………?」 「……うっ………はっ……はーっ!」 過ぎた魔力の使用により、体が限界に達している。 それでもヴァイスは気力で目を開き、憎むべき敵を睨んでいた。 橋の周辺では、戦闘が継続していた。 兵力はお互いほぼ均等に減り、規模は小さいが接戦を展開している。ロビンたち弓兵の活躍により、わずかだがゼリアルが有利になっていた。 「ロビン!大丈夫か!?」 「アレン!」 「森の中はほとんど抑えた!ヴァイスが敵のエースと戦ってる!」 直後、森の中で轟音が響く。 ヴァイスがまだ戦っている証拠だった。 「ヴァイス君1人で?大丈夫なの?」 「……大丈夫だと思う。」 アレンの様子に何かを悟ったのか、ロビンは頷いた。 「ここはなんとかする!クイーンの護衛に戻って!」 「わかった!」 手の空いた生徒をまとめ、アレンは南に行軍する。 森の中で相変わらず轟音が響いていた。 「ん……ふわぁ………」 各地の戦闘が激しさを増す中、エリアは眠そうにあくびをかましていた。 ミーアが注いだ紅茶を飲みながら、いかにも暇といったように髪をいじる。 「アレンさん、遅いですね………」 ミーアはメーターを見ながら呟く。 先ほどから左右に振れる回数が多くなっている。 つまり多くの生徒が殺しあっているということだった。 「……あいつは帰ってくるわよ。」 静かな声で言うエリア。 「私の護衛なんだから、勝手に死なれちゃ困るわ。」 「……そうですね。」
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