両校交流戦、秋の陣~後編~

31/38
前へ
/334ページ
次へ
城に着いたアレンは会議室に飛び込んだ。 包帯だらけのシェイラが腕を組んで難しい顔をしている。 「シェイラ!南がやられた!」 「知ってるわ。今作戦を考えてるから………」 地図を睨む顔は真剣そのもの。 たまに舌打ちをしながら目を地図に走らせた。 「………恐らく敵の主力は南に集中している。ここに来るか、中心を抑えに来るか………」 独り言のように呟くシェイラ。 アレンもその様子を困ったように眺めた。 「あ、アレン………」 「ん?」 「下ろしなさいよ……」 アレンにお姫様抱っこの形で抱えられたエリア。 満更でもなさそうに顔を赤らめながら俯いた。 「あ、ごめん。」 「よし、決めた。」 2人のやり取りには全く興味を示さず、シェイラが立ち上がる。 「決めたって……何を?」 「今後の作戦よ。」 シェイラは地図を指差し、続けた。 「今から全軍で中心突破。そのまま進攻、敵の城を落として試合終了。」 傷を気にする様子もなく、シェイラは立ち上がると会議室を出た。 残された2人も戸惑いながら続いた。 城の周りの生徒、シェイラの隊の生徒が集合する。 「全員、よく聞いて。これから全指揮をアレンに一任する。アレンに従って、敵の城を落とすの。」 「は?はい?何言ってるんだ?」 アレンはいきなりの指示に首を傾げる。 「恐らく南からの進攻が来るだろうから、私が残って城を守る。恐らくもって半日だから、それまでに何とかするの。わかった?」 戸惑う生徒を無視し、一息に説明をするシェイラ。 「でも、お前、傷が………」 「私を誰だと思ってるの?」 不敵な笑みを浮かべ、包帯を解くシェイラに、ただアレンは圧倒された。 「戦力は1人でも多い方がいい。だからエリア、あなたも進攻に参加して。」 「わ、私も!?」 「ちょっと、ちょっと待てって!」 「時間がないわ。ほら。」 南の砦から生徒が来ている。 確かに論議の時間はなさそうだ。 「くそっ……みんなついて来い!」 「それでいいのよ。さあ、行ってらっしゃい。」 アレンを含め、残り30人ほどの生徒が森へ走る。 シェイラはその後ろ姿を見届け、詠唱を始めた。 「……ディフュース・ブリザード。」
/334ページ

最初のコメントを投稿しよう!

551人が本棚に入れています
本棚に追加