両校交流戦、秋の陣~後編~

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エリアは木陰に隠れながら周りをうかがっていた。 アレンとエルティズは激しい音を響かせながらぶつかっている。 立場の入れ代わりが激しく、迂闊に手は出せない。 アレンに当ててしまう可能性が高かった。 「………くっ……」 木陰から戦闘中のミセアの生徒に風の刃を飛ばす。 一緒に橋を渡った生徒はもう半数がやられてしまっていた。 兵の量で考えれば明らかな不利。 「どうしたらいいのよ……」 焦りから、体が自然と前へ出る。 その時、ミセアの生徒がエリアのバングルに気づいた。 「クイーンがいたぞ!その木の影だ!」 「……え、エリアさん!逃げて!!」 「なっ!?……もうっ!」 誰が放ったかもわからない叫びに反応し、エリアが走り出す。 アレンに言われた通り、木を使ってジグザグに城を目指して走った。 激しい攻防を繰り返す2人。 お互いの攻撃はかすりもせず、剣と剣のぶつかる金属音が響いていた。 もちろん2人とも手を抜いているわけではない。 見切りの技術に長けた両者は避けに集中すれば一対一で傷を負うことはなかった。 「………ふぅ……やっぱり簡単には決まらないな?アレン。」 「……お互い様だよ。」 体格はエルティズの方がやや上回る。 かといってアレンの腕も負けていない 先に体力と集中が尽きた方の負けになりそうだ。 「……そろそろ………本気でやらせてもらう。」 エルティズの剣が炎を放つ。 今まで純粋に剣で戦っていたが、それでは決着が着かないと悟っていた。 「………魔法も使えるのか………」 アレンは正直言って魔法は苦手だった。 ただでさえ集中しなければいけない状況で、慣れない魔法など使っている余裕はなかった。 「……こっちも誇りがかかってるからな。負けるわけにはいかないんだ。」 剣先をアレンに向け、申し訳なさそうに笑う。 その笑みには勝利を確信した余裕が見えた。 「……俺は別に誇りなんて関係ないけど………」 誇りや名誉には興味のないアレン。 それでもエルティズと同じように剣先を真っ直ぐに上げ、余裕の笑みを作ってみせた。 「負けるのは好きじゃないよ。」 「……同感だ。」 鋭く睨み合う両者。 どちらからともなく、戦闘が再開された。
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