551人が本棚に入れています
本棚に追加
エリアは1人、必死に走った。
「はぁっ……はぁっ………」
傾き始めた太陽が赤い光で森を覆う。
息も上がり、体全体に汗が浮いているのがわかる。
逃げるように指示を受けたはいいが、どこまで逃げれば城に着くかはわからない。
後ろには敵の気配、前には敵の城。
思考を巡らす暇もなく、ただただ少しでも先へと足を出していた。
「あっ!」
木の根に足をとられて転ぶ。
「いたっ……」
血の滲んだ膝を見て顔を歪める。
しかし、立ち止まる時間はなかった。
「いつまで逃げればいいのよっ!アレン!助けなさいよ!!」
声を張り上げ、再び立ち上がる。
恐らくアレンはそれどころではない。
わかっていても頼りたくなってしまう。
前方の茂みが揺れた。
(………誰かいる!?)
エリアはその場で硬直した。
茂みの揺れが徐々に大きくなる。
迫る人の気配に、エリアは慌てて杖を構えた。
「ふっ!!」
「ぐはぁっ!」
アレンが弾き飛ばされ、大木の幹にたたき付けられる。
「くっ……そぅ………」
アレンが呻きながら膝を着く。
エルティズの炎と剣は激しさを増す一方。
防ぎきれなかった数回の斬撃だけで、アレンはボロボロになっていた。
エルティズは苦笑しながら剣を下ろす。
「……その状態でよく戦った方だ。もう力も入らないだろう?」
「………どう……だろうな!?」
歯を食いしばり、流血する拳で地面を叩く。
「うおおぉぉ!!」
残った気力を振り絞るように大声を張り上げる。
立ち上がったはいいが、力の入らない膝がガクガクと震える。
それでもアレンが立ち上がったことに驚き、エルティズは唖然としている。
「………すごいな……死んでもおかしくないはずだが………」
「………はー……はーっ……」
「………もういいだろう?楽しかったよ!!」
エルティズが剣を持ち上げる。
アレンがそれ以上動かないことを確信し、止めに走る。
対するは意識があるのかも怪しいアレン。
下ちた剣を拾うことさえできず、ただ呆然と迫る炎を見つめていた。
最初のコメントを投稿しよう!