両校交流戦、秋の陣~後編~

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エリアは1人、必死に走った。 「はぁっ……はぁっ………」 傾き始めた太陽が赤い光で森を覆う。 息も上がり、体全体に汗が浮いているのがわかる。 逃げるように指示を受けたはいいが、どこまで逃げれば城に着くかはわからない。 後ろには敵の気配、前には敵の城。 思考を巡らす暇もなく、ただただ少しでも先へと足を出していた。 「あっ!」 木の根に足をとられて転ぶ。 「いたっ……」 血の滲んだ膝を見て顔を歪める。 しかし、立ち止まる時間はなかった。 「いつまで逃げればいいのよっ!アレン!助けなさいよ!!」 声を張り上げ、再び立ち上がる。 恐らくアレンはそれどころではない。 わかっていても頼りたくなってしまう。 前方の茂みが揺れた。 (………誰かいる!?) エリアはその場で硬直した。 茂みの揺れが徐々に大きくなる。 迫る人の気配に、エリアは慌てて杖を構えた。 「ふっ!!」 「ぐはぁっ!」 アレンが弾き飛ばされ、大木の幹にたたき付けられる。 「くっ……そぅ………」 アレンが呻きながら膝を着く。 エルティズの炎と剣は激しさを増す一方。 防ぎきれなかった数回の斬撃だけで、アレンはボロボロになっていた。 エルティズは苦笑しながら剣を下ろす。 「……その状態でよく戦った方だ。もう力も入らないだろう?」 「………どう……だろうな!?」 歯を食いしばり、流血する拳で地面を叩く。 「うおおぉぉ!!」 残った気力を振り絞るように大声を張り上げる。 立ち上がったはいいが、力の入らない膝がガクガクと震える。 それでもアレンが立ち上がったことに驚き、エルティズは唖然としている。 「………すごいな……死んでもおかしくないはずだが………」 「………はー……はーっ……」 「………もういいだろう?楽しかったよ!!」 エルティズが剣を持ち上げる。 アレンがそれ以上動かないことを確信し、止めに走る。 対するは意識があるのかも怪しいアレン。 下ちた剣を拾うことさえできず、ただ呆然と迫る炎を見つめていた。
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