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黙っているアレンを見て、ドーアは真面目な顔で頷く。
「そうだな……アレン君、何か思い出せるまではこの家で過ごしてくれて構わない。メイドの手伝いでもしてやってくれ。私が近くで捜索願いが出されていないかどうか調べておこう。」
「お父様!?」
アレンが現れてから終始無口だった少女が初めて口を開いた。
「冷戦中のこんな時代、外に置いておけば生活などできないだろう。私の領地で盗人などは出したくないからな。………どうするかね?」
アレンの意見を求めるドーア。
「………正直、他にどうしようもないので、助かりますけど……いいんですか?」
「私は反対です!こんな役に立ちそうにもない平民、置いといたってきっといいことなんてない!」
(………随分な言いようだな。)
少しムッとして少女を見る。
少女も真っ直ぐにアレンを睨んでいた。
「まあまあ、そう言わずに。家政婦が1人増えても困らないだろう。それに、民を見捨てるとは統治者として恥ずべき行為だ。」
ドーアは少女を優しく諭しながらアレンに言う。
「何も思い出せなければ街や王都の病院へ連れていこう。しばらくはここでゆっくりしていなさい。」
「本当にいいんですか?」「もちろんだ。構わないだろう?」
ドーアは少女に問い掛ける。
「お父様がよろしいのであれば、私は口出ししません。………せいぜい追い出されないようにしっかり働くことね。」
少女は最後にアレンを見据え、上から言い放つ。
「お前っ………まだ子供のくせに偉そうな口を……」
少々腹の立ったアレンは、世話になる身分なので小さい声で毒づいた。
少女は確かに綺麗だが、自分よりまだ幼く見える。
「……何?私は今年で16よ。」
「なっ!?」
聞こえていたのか、低い声で少女が言い返す。
その返答にアレンは驚きの声を上げた。
見た目ではまだそんな歳にはとても見えない。
しげしげとエリアを見つめると、機嫌悪そうに睨みつけられた。
「だから……何よ?」
「16歳にしては童顔なんですね。しかも……」
視線を下にずらす。
男性と女性、大人と子供を見分けるためのその部分が目に入る。
「胸が小――」
「それ以上言ったら頭に風穴空けるわよ。」
腰から木で出来た何かを抜き、アレンの額に突き付けた。
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