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言葉では脅されているが、アレンの顔に怯えはない。
こんなただの木の棒に風穴を開けられるほど、人間は柔らかな作りではないはずだ。
「どうやって?そんな棒きれで。冗談はやめてほしいな。」
アレンが若干の嘲笑を込めて言うと、少女は冷えた眼差しで睨みつけ、
「……こうやってよ!」
額から少し動かし、壁に何かを向けた。
少し何かを唱えて目を見開くと、杖の先端から風が渦を巻き、空気の弾丸が飛び出した。
遅れて風がアレンの髪を揺らす。
着弾した壁をゆっくりと振り向き、顔を引きつらせる。
「………いいい、今のは!?」
風の弾丸は木でできた壁に綺麗な風穴を開けていた。
「あなた魔法も知らないの?どんだけ非常識………って記憶がないんだったわね。ま、これで冗談じゃないってわかったでしょう?」
少女は呆れながら言う。
アレンは冷や汗を流しながら頷く他にない。
「では、明日からまた学校なので、私はお先に失礼します。」
少女が立ち上がると、横に控えていたメイドが食器を片付け始めた。
「それから………」
少女はもう一度アレンに向き直る。
「私の名前はエリア。エリア・ファン・ディル・ヴェストロン。次に『お前』だなんて無礼な呼び方したら、許さないんだから。」
柔らかな金髪を指で振り上げながら、琥珀色の瞳をがアレンをギロッと睨む。
幼く見えても整った顔立ちのため、迫力があった。
「では、お父様、おやすみなさい。」
優雅に一礼し、エリアは部屋を退出していった。
「………エリアを怒らせると大変なことになる。気をつけた方がいい。」
エリアが廊下に消えたのを見て囁く。
「は、はぁ……」
「お腹が空いてはいないかね?体力を付けるためにも、何か食べた方がいい。」
「あ……そういえば腹減ってますね。」
「よし、何か用意させよう。………ミーア、彼に何か食べ物を。」
「はい、かしこまりました。」
エリアの食器を下げていた青い髪のメイドが返事をする。
食器を下げた後、すぐにそのメイドがトレイを持ってくる。
パンとスープだけだったが、久々に物を食べた気がして満足だった。
「では、私もお先に休ませてもらうよ。詳しくは先程のミーアに聞いてほしい。では、しばらくの間、よろしく頼むよ、アレン君。」
ドーアが席を立つ。
「はい。いろいろとありがとうございます。」
穏やかな笑みを向け、ドーアも廊下に消えていった。
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