運命のイタズラ

14/18
前へ
/60ページ
次へ
葵が亡くなってから、英二郎は大祖母や義母、そして葵の姉妹や親戚中から「葵が死んだのはお前のせいだ!」と罵られた。 ただでさえ入り婿という肩身の狭い立場なのに、更に状況は悪化した。 「綾千代はわたくし達で立派に育てます。葵が亡くなった今、あなたの居場所はここにはありません。目障りです。出ていきなさい。」 大祖母から出た言葉は、とても痛烈なものだった。 最愛の妻を亡くし、その上たった一人の"息子"まで取り上げられるのか!! 英二郎は怒りと悔しさで狂いそうになった。 しかし、綾千代だけは絶対に渡せない。 もし男の子だと分かった場合、何をされるか分からない。 そう感じた英二郎は、深夜、綾千代を連れ家を出た。息を殺し、足音も立てずに、寝ている綾千代をしっかりと抱きしめながら…。 ----------------------------------- 「それからは、二人での生活だ。でも、日が経つにつれ、綾千代はどんどん美しくなってきてね…今では葵によく似てる。」 おじさんは話しを終えると、目尻に溜まった涙を拭った。 あたしはその話しを聞いて、胸がいっぱいになってしまった。 おじさんと綾千代にそんな壮絶な過去があったなんて…。自分の言動が急に恥ずかしくなった。
/60ページ

最初のコメントを投稿しよう!

80人が本棚に入れています
本棚に追加