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葵が亡くなってから、英二郎は大祖母や義母、そして葵の姉妹や親戚中から「葵が死んだのはお前のせいだ!」と罵られた。
ただでさえ入り婿という肩身の狭い立場なのに、更に状況は悪化した。
「綾千代はわたくし達で立派に育てます。葵が亡くなった今、あなたの居場所はここにはありません。目障りです。出ていきなさい。」
大祖母から出た言葉は、とても痛烈なものだった。
最愛の妻を亡くし、その上たった一人の"息子"まで取り上げられるのか!!
英二郎は怒りと悔しさで狂いそうになった。
しかし、綾千代だけは絶対に渡せない。
もし男の子だと分かった場合、何をされるか分からない。
そう感じた英二郎は、深夜、綾千代を連れ家を出た。息を殺し、足音も立てずに、寝ている綾千代をしっかりと抱きしめながら…。
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「それからは、二人での生活だ。でも、日が経つにつれ、綾千代はどんどん美しくなってきてね…今では葵によく似てる。」
おじさんは話しを終えると、目尻に溜まった涙を拭った。
あたしはその話しを聞いて、胸がいっぱいになってしまった。
おじさんと綾千代にそんな壮絶な過去があったなんて…。自分の言動が急に恥ずかしくなった。
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