あなたが好きだから

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---校長室。 ブラウンで統一された室内には、歴代の校長の写真が壁一面に飾られ、部活動で得た優勝旗やトロフィーなどが所狭しと並べられている。 全体をゆっくり見回していると、デスク横のドアが開いた。 「お待たせしてすまないね、私が校長の竹部だ。ようこそ我が校へ…神野綾千代くん。」 重低音の貫禄のある声が室内に響く。 彼の目の前にはセーラー服を着た綾千代が座っていた。 「こちらこそ、これからよろしくお願いいたします。」 綾千代はゆっくり立ち上がり、深くお辞儀をした。初めて足を踏み入れた他校の校長室に、普段冷静な綾千代も幾分緊張していた。 「それにしてもこの時期に転校してくるのはかなり珍しいね。何か家庭の事情でもあったのかい?」 校長は綾千代の前の2人掛けのソファーに腰を下ろした。 「いえ…そういう訳ではないのですが。」 さすがに鞠緒の為とは言えず、言葉を濁してしまった。 「まあいい、人それぞれ事情はある。」 校長は何かを察してくれたのか、それからは特に突っ込む事もなく、しばらく世間話に華が咲いた。
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