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「な、何…?」
あたしはドア越しに綾千代に話し掛けた。
「あの…今日の事、その…謝らせていただきたくて…。」
今日の事…。思い出したくなかったのに…。
あの時のキスを思い出し、どんどん顔が赤くなるのが分かった。
出来る事なら犬にでも噛まれたと思って早く忘れたい。
「今更遅いし、あたしもう忘れたいんだ。だからそっとしておいてくれないかな。」
一刻も早く、綾千代に部屋の前から離れて欲しい一心で、きつめに言い放った。
「申し訳ありません…。でもわたくしは…「もういいって言ってるじゃん!謝るんだったら最初からあんな事しないでよ!初めてだったんだよ!それを…」
下手したら両親に聞こえてしまうかもしれないくらい、気付いたら取り乱していた。
でも…謝るのは逆に卑怯だよ…。
「ごめん…言い過ぎた。お願いだからもうほっといて…」
涙が浮かんできた。
頭の中がモヤモヤする。
「分かりました。申し訳ありません…おやすみなさい。」
そう言い残し、綾千代はドアの前から静かに去って行った。
足元から崩れた。既に涙が溢れて止められない状態になっていた。
「…ウッ…ヒック…」
あたしは子供のように泣きじゃくってしまった。
あたしが悲しいのは、初めてのキスを奪われたから?
それとも…。
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