甘い温もり、ココロの痛み

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「鞠緒…綾ちゃん、体の具合でも悪いのかしら。」 「えっ…?」 いつもなら綾千代が座っている席に目をやりながら、母さんが心配そうにしている。 「いや…なんか今日引っ張り回しちゃったから疲れたんじゃないかな。」 「そう…何だか顔色も優れなかったみたいだし…鞠緒、綾ちゃんはこっちに来たばかりで疲れてるんだから程々にしてあげてね。」 「分かった。」 確かに疲れているのかもしれない。 拓海の事もあったし…。 でも、本当はそんな事じゃない気がする。 ただ、母さんが余りにも悲しそうな顔をしたから、そう答えるしかなかった。 「ごちそうさま。」 食べ終えた食器を流しに置き、自分の部屋に戻ろうとした。 「鞠緒!」 不意に母さんに呼び止められた。 「これ、綾ちゃんに持って行ってあげて。」 そう言う母さんの手には、小振りなおにぎり2個とみそ汁が入ったお椀が乗ったお盆があった。 「え~…。」 「え~…じゃない!さっさと持ってって!可愛くない!」 いつの間にかいつもの母さんに戻っていた。 地味に傷付きながらも渋々お盆を受け取り、2階へ上がった。
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