甘い温もり、ココロの痛み

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特に話す事がない。 このまま部屋にいても仕方がないと思い、 「じゃあ、おやすみ。」 とだけ伝え部屋を出ようとした。 「鞠緒さん。」 不意に綾千代に呼び止められた。 綾千代の表情は何故か今にも泣き出しそうに見える。 「どうしたの?何かあった?」 「え…?」 「いや、なんか今にも泣き出しそうだからさ。何かあったのかと思って…。」 「そう見えますか?」 そう言う綾千代は、自分の表情の変化に気付いていないようで、困惑しているようだった。 もしかしたら綾千代ですらあの時の自分が流した涙の意味が分からないのかもしれない。 「とりあえず今日はゆっくり休みなよ。疲れてるんだよ、きっと。」 あたしはそんな言葉しか掛けられず、部屋を後にした。
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