甘い温もり、ココロの痛み

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某県某所---。 「…芹澤…あの件はどうなったのかしら。」 山奥のとある邸宅。 重厚感漂う漆黒の家具に包まれた空間の中に、一際存在感を放つ老女がいる。 後ろを向いたまま微動だにせず、静かにいかにも秘書であろう女に問い掛けた。 「綾女(アヤメ)様、現在あの方のいる都道府県は特定出来ました。あと二週間もあれば確実に見つけ出せるかと…。」 「…そう。あと二週間なのね。早く見つけ出して頂戴。なんとしてでも!」 その口調は鋭く、そして女がたじろぐ程威圧的なものだった。 「かしこまりました。最善を尽くします。」 そう言うと、女は部屋を後にした。 「綾千代…もうすぐ会えるのね…。」 口元に手を当てながら老女は妖しく微笑んだ。
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