『手』にまつわる覚え書

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『一夜め』  午後10時。私はアパート近くのハンバーガーショップの前に立っていた。 明日提出のレポートがちっとも進まないので、息抜きがしたかった。 アパートで取り組み始めてから2時間は経つというのに、ちっとも進まなかった。 明日の夕方にはきちんとプリントアウトして提出しなければならないというのに、いくら考えても言葉が出てこない。  アナログの目覚まし時計の針の音がいやに大きく聞こえてきて息がつまりそうになったのだ。 店のガラス戸に手をかけたとき、ふと戸の横にあるテラス席に目がいった。テラス席には若い男性の二人組が座り、なにやら話し込んでいた。 背格好の同じくらいの2人。服装もジーンズにジャケット、パーカーと普通だ。 特に気にとめることもないごく普通の光景だったが、私はなぜかその2人に違和感を覚えた。
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