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             なんて、言うんですかねぇ。  荒唐無稽によって表された、――とでも称しましょうか?  或いは、支離滅裂、乱雑無章、無茶苦茶、アナーキー、クレイジーにルナティック……なんだって構いやしません。以上の表現で、だいたいアタシの言わんとする感覚はお察しいただけたかと思います。  そうです。  こんな、でたらめな風景――  先刻までのアタシは知りやしないんですよ。  いろいろと、アンバランスなんですな。  アタシの知ってる晴れ空ってのは、たいていが爽快とした水色か、夜にしても黒か藍色と言ったところでしょうか。しかし、見てごらんなせぇ。たった今の空には薄気味の悪い紫色が広がっているじゃございませんか。こいつはちょっと、ピクニックをするにも具合が悪そうです。  アタシが立っているのは、そりゃ当然、地面なんですけどね。これもおかしい。白濁としておりますが、ギヤマンですぜ、こりゃ。うつつを抜かして歩けば滑りそうでおっかないこってす。  ちょっと先、つるっつるの地面から突き出し、紫の空に向って生えるアレも、なんですかね? 地面と似たような材質のいびつなオブジェにございます。いろいろとパターンがありましてね、中には頂上付近にたいそう大きい球体を乗せてあるものもあります。  無機質なオブジェたちの他には、なぁにもないんです。 「まったく」  人を小馬鹿にしたような風景が目の前に広がっているわけでしてね。  アタシもなかなかビックリとしたものです。  なにせ、ここまで歩いてきたわけじゃございませんから……  いささか記憶も惑乱しとりますが、――そうそう、確か旅先で立ち寄った瀟洒な街角で、お茶でも飲もうとたくらみましてね。難なく見つけた喫茶店に入ろうと、ドアを開けて――  くぐると此処に立っていたという寸法です。  さっそく、背後に振り返ってみましたが、残念ながら通ってきたはずのドアはもう、何処にもありゃしません。  参りましたねぇ。  そこまで茶を求めていたわけじゃございませんが、かと言って、無聊にここで立ち往生させられるよりは、少々街に戻りたいんですが。  そう容易くはいかないようです。  夢ならば、この夢が覚めるまで。  アタシャここに居座ることになるんでしょう。  夢の中じゃ手前の頬を抓ることは難しいですからね、何か取っ掛かりを見つける必要は、まあ、ありそう、てな具合にごぜぇます。  
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