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   幸いなことが、ひとつ。    自分が此処で「すべき事」だけはわかってるんでね。  さほど難しいことじゃないと信じたいところですね。  何故「それ」だけを理解しているのか、とか、「それ」をしてどうなるのか、なんてことは一切存じておりゃしやせんが。わかっているんですよ。アタシは。アタシが何をしたら良いのか。  なので、さっさと歩き始めましょうか。  まずは一人ずつ、出会っていくとしましょう。  皆さん、アタシと一緒で寂しがってたらいけない。ええ、まだ顔も知らない連中ですがね。アタシは小心者なんで、他人の事が気になってしょうがないんですよ。  ――全員、例外なく元の世界に帰してあげるとしましょう。  それがアタシに残された、ただ一つの行動余地なんですな。  おっと。  申し遅れましたが、アタシの名前はアッシュヘアー。  灰被り。  旅をしながら煙突掃除で小金を稼ぐ、卑しい風来坊にございます。石灰をすり込んだように汚らしい色をした髪が自慢にございます。  覚えるのが手間だと言うのならば結構。    どうせ最後には皆さん、いなくなっちまうんですから。            
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