幻縁編

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満月の夜。 梨花は縁側に座りボンヤリと月を眺めていた。   片手には、グラスに入れた葡萄ジュース。満月の光を浴びて芳醇な薫りを放っている。   羽入に見つかると、ワインは子供が飲んだらダメのです!!と激しい剣幕で飲むのを制止してくるので、今では羽入が居ない時にこっそり飲むようにしている。   ちなみに何度もこれは葡萄ジュースだ!、と言っても理解はしてもらえなかったので今では諦めている。     「あなたは、今頃何をしているのかしらね…?」     遠くを見つめるような目で梨花は小さく呟いた。   「幾度も…幾百も繰り返した現世で、あなたに出会えたのは結局たったの一度だけ。フフ…あの世界はサイコロで言うなら一体何の目だったのかしらね?」     物悲しそうな声で呟いた後、葡萄ジュースを一口飲んだ。 その時、後ろの寝室の方で「ん~…」と小さな同居人が呻いた。   起こしたかな?と思ってると小さな同居人は布団から体を起こし、寝呆け眼で梨花に声を掛けた。     「…梨花ぁ~?こんな時間に何してますの?明日も早いんですのよ?ふぁあ~…」   「みぃ…ちょっと寝付けなくてお月様を見てたのです。ボクも、もう眠りますので、沙都子は先に床に着いてて下さいなのですよ。ニパー☆」   「…えぇ、そうなさいまし…明日も…早い…ムニャムニャ」   沙都子は、言われるより早く布団に潜り込み直ぐに寝息を立て始めた。
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