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そしてたどり着いた先は美術室…
みんな授業以外の事では美術室に近寄ろうとしない…
静まり返った廊下に私の荒くなった息と暴れまわっている心臓の音が聞こえる…
その沈黙を破ろうと言葉を探すが心臓の音が頭いっぱい広がり言葉が見つからない…
―どうしよう…焦って先輩を引っ張って来てしまったけど…何を話そう―
そんな事を考えていると彼が沈黙を破った。
『愛理ちゃん…急に走ったりして…どうしたの!?』
彼の困った顔を見たら涙が溢れてきた…
「ごめんなさい…迷惑をかけてしまって…私…【キーンコーンカーンコーン…】」
遠くで予鈴が聞こえた…急に泣き出したから彼もあたふたしてた…彼への気持ちは出してはいけない…そう思った。
だから涙を拭って笑顔で言った。
「こんな所まで連れて来ちゃってすみません!!手帳ですよね。昨日は電話ありがとうございました…もう落とさないようにします」
そう言って深く礼をした。彼は混乱している様子だったが私に手帳を渡した。
『うん…顔上げて。はい、これ』
「ありがとうございます!では授業なので失礼します」
『ぇっ…ちょっと!!』
私は聞こえない振りをして溢れる涙を堪えながら走って教室まで戻った。
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