優等生過ぎて…

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「いきなりで悪い。勉強教えてくんないか?」 「え」 驚いた。さぼりの常習犯の穂純君が真面目に勉強を教わろうとしているのだから… 「なんで?」 「このままじゃ留年って言われちまってよ。留年だけは勘弁なんだ」 「なる程」 「このまま退学も考えたけど、なんか負けなような気がしてな」 「負けなようなって…」 勝負じゃないんだから… 苦笑いを浮かべながら、僕は穂純君に勉強を教える事になった。勉強を教えるのは嫌いではない。そう言うと穂純君は驚いていたが… 「お前凄いな…わかりやすい」 「そうかい?なら良かった」 「教師になれる」 「でも教師になる予定はないですよ」 「じゃあ何になるんだ?」 「まだ決まってないよ」 僕がそういうと穂純君は驚いた。 「勿体無い。あんた勉強できるのに」 「勉強できても将来決まってるのなんてごく僅かだよ」 あ… やばいと思った。 さらりと勉強できるなんていったら生意気な奴だと思われるではないか。 前に無意識にそんな言葉を出した時、嫌な顔をされたのを覚えている。 またやってしまった。 しかもあまり学校に来ないで喧嘩ばかりしていつもアザだらけで来る穂純君だ。 今日も口端に少しケガしてる。 殴られるだろうか… 「?なんだ」 「な…なんでも」 でも嫌な顔をしていないところをみたら、僕の言葉を気にしていないようだ。 「しかしあんたって優等生過ぎるよな」 「え」 「勉強の教え方は上手いし人はいいんだけど、なんか近寄りがたいというか…」 「あ…」 ―なんか住む世界が違うんだよな 昔も今もよく言われてきたセリフ。 自分では普通に接しているのに、周りにはそうは見えなくて… 「そんなつもりはないんだけど…」 やばい…少し声震えてるかも… 「やっぱり勉強が趣味で好きっておかしい…ですよね」 「……いや」 穂純君は静かに否定する。 「俺には理解出来ないが、あんたはそれが好きで普通だと思うんだろ?なら好きでいいんじゃないか?誰かにやめろと強要されてやめられるものでもないし」 「穂純君…」 「あんたが勉強以外で人を見せればいいだけだ」 「え?それはどういう…」 「あんたんちって門限あるか?」 「特にないです…けど」 「帰り、マックとゲーセンに寄らね?」 「え…」 それは意外な彼からの誘いだった。
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