正反対の二人

2/6
前へ
/33ページ
次へ
「いらっしゃいませ」 帰りにファーストフード店に寄るのは初めてかもしれない。 制服で友人とどこかに寄るのをずっと夢みてた。 僕は周りから真面目過ぎるとみられているだけあってこんな友人と制服で…なんて叶わない夢だと思っていた。 穂純君は友人…というよりクラスメイトでまだどんな人かもわからない。噂をきく限りではあまり良い印象はないけど噂とは大抵間違っているからあまり噂を鵜呑みにはしたくない。 「で?あんたは何を頼む」 「えっ!」 「えじゃなくて早く決めねーと。後ろつっかえてるんだからさ」 「あ…」 後ろを向けると早く注文しないかと苛立っている客が目にとまった。 「えっと…」 は…早く決めないと。でもメニューが沢山あるし何が美味しいかもわからない。ここは定番のテリヤキを頼んだ方がいいのだろうか。 「迷ってるのか?」 「そ…そうじゃ…沢山ありすぎて……あ…あのさ穂純君」 「何だ?」 「Sサイズが小さいんですよね」 「は?」 ぽかんとした顔で僕を見る。自分でも馬鹿な事を聞いたって思う。冷静に考えればSが小さいに決まってるじゃないか。何を口走ってるんだ僕は… 「あ…ごめんなさい。今の忘れて」 「あ…あぁ。…その…、俺が適当に注文しとくから、あんたは座れる場所でも確保しといてくれ」 「えっ…うん」 馬鹿だと思われただろうか。 幻滅させられたかな。 そんな小さな不安を胸に、僕は穂純君と座れそうな席を探し、見つけ、穂純君が来るまで一人待っていた。 穂純君がもってきたのはテリヤキだった。 あとはジュースにポテト。無難なものだった。 「適当だからテリヤキにした。あんたずっとテリヤキみてただろ?」 「う…うん」 テリヤキ食べたそうな顔していたのだろうか。でも嫌いじゃないし味は美味しいのを知っているから僕は何年振りかのハンバーガーに口をつけた。 「おい」 「え…」 すると何故か怖い顔で睨まれた。 「なんだよそのちょびっとした食べ方は」 「ちょ…ちょび?」 「ハンバーガーなんだ。かぶりつけよ。女みたいにちまちまと」 「ご…ごめん…あまりに久しぶりで味わって食べたくて」 「久しぶりって…いつ振りだよ」 「えっと…中学一年に食べたっきりだから…四年振り?」 「信じらんねぇ…」 驚いた顔で穂純君は僕を見る。 そんなに驚く事だろうか。
/33ページ

最初のコメントを投稿しよう!

329人が本棚に入れています
本棚に追加