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「…はふ…御馳走様でした」
「おい…口元」
「え?」
「ついてる」
「あ…は、恥ずかしいな」
ごしごし拭う。しかし取れてないみたいで穂純君がティッシュでそれを拭ってくれた。
「あ…有難う」
さすがに恥ずかしさに俯いてしまう。穂純君は気にしていないといって立ち上がった。僕も続いて立ち上がる。
お腹は一杯になった。だけどこれで終わりじゃない。
「あんたってゲーセン行かなそうだよな」
「え…なんでわかるんですか?」
「見ればわかる」
溜め息をつく穂純君。そんなに行かなさそうに見えるのだろうか。
「あ…でも」
「?」
「UFOキャッチャーは何度かした事ありますよ。でも取れませんでした」
「下手だな」
「はい…取れる人は凄いです。僕は運ないので…」
「運なんかなくてもコツがありゃ簡単だ。あんなの…」
そういうと一つのUFOキャッチャーに穂純君はお金を入れた。そのUFOキャッチャーの中はぬいぐるみじゃなく、お菓子だった。
「お菓子…今のUFOキャッチャーってお菓子もとれるんですね」
「お菓子だけじゃない。ゲームソフトや玩具もある」
「難しそう…」
「まぁ、初めてやる奴はそうかもな。けどコツがわかれば一発でとはいわないがとれない事もない」
穂純君は慣れた手付きでボタンを押す。
そして取りたい場所を定めて、決定ボタンを押した。
「これ…どうみてもとれませんよ」
「みてろよ」
どうみてもそれは取れなさそうにみえた。しかし、レバーの片方が上手く周りを邪魔したせいかそれが穴にぽとんっと落ちた。
狙っていたのはどうやら周りを邪魔していたお菓子だったようだ。
「凄い…」
「凄くねーよ」
「そんな事ない!凄いです…穂純君はUFOキャッチャーの天才ですね」
「対した事ない。あんたに比べたらこんなのどうって事ないだろ。あんたのが凄いだろ、頭良いし」
「頭は…でも、僕にはこんな器用な事出来ません。やっぱり穂純君は凄いです」
「……」
呆れた表情を浮かべながら、穂純君は僕に取ったお菓子を渡した。
「え…」
「やるよ。俺…甘いの苦手だから」
「あ…有難う…」
「このままだと目立つだろ。袋あるから持ってくる」
穂純君は駆け足で袋を取りにいった。
まるで逃げるように。
「……」
不思議だ。
何もかも正反対なのに、楽しいと思ってしまうのは…
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