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やはり穂純君は笑った顔が良い。
いつも無愛想だから周りは怖がるのだ。今の穂純君なら怖くない。睨まれても怖くない。
だって僕は穂純君の笑顔を知ってるから。
「それよりもあんたのその敬語、癖なのか」
「え…」
「同じ学年のクラスメイトなのに敬語っておかしいだろ」
「あ…」
「多分…その敬語も原因なんじゃね?周りがあんたに必要以上に近づかない理由って…」
「そう…なのかな」
「そうだよ。俺だってあんたに声掛ける時多少躊躇ったもんだ」
「穂純君が?」
信じられない。
穂純君なら堂々と声を掛けてきそうなのに。
「でも今は少し平気かもな。あんたってなんか変で面白いし」
「面白い?」
「面白いというかほうっておけない?」
「そう…なんですか?」
「そうなんだよ。なんか危なっかしいぜ。…とにかくなんだ、敬語で喋られちゃなんか痒いからさ…敬語止めてくんね?他の奴には敬語でいいからせめて俺にはタメ口にしてくんないか」
「それって友達になってくれるって事ですか!」
「へ」
つい勢いよく顔をずいっと近づける。
「と…友達になって…くれるの?」
「友達…それは考えてなかった」
「…そう…ですか」
見えない犬の耳が垂れ下がるのが自分でもわかる。僕は落ち込んでいた。でもわかる事じゃないか。
穂純君が僕みたいな正反対の人間を友達なんて考える筈ないと。
「…あんたは俺と友達になりたいのか?」
「え…それは勿論」
「…そうか。…やっぱあんたって変人だ」
小さく笑って言うと、穂純君は僕に言った。
「敬語をやめてくれるなら、友達になってやるよ。あんた面白いし、気に入った」
「気まぐれで?」
「なんだ、気にしてんのか?これに関しちゃ気まぐれじゃなく純粋にだ。安心しろよ」
僕達は何もかもが正反対。
「穂純君…友達になってくれたお礼に明日勉強プラス一時間教えてあげるよ」
「げ…勘弁」
「え!なんで」
だけど、ここで奇妙な友人関係が出来たのは僕にとっても穂純君にとっても予想外である事は言うまでもなかった…
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