私は…

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もうすっかり夜の帳も降りきった街は暗く、空も曇っているため街灯の光がなければ地面も視認出来ない有様だ。 青梅駅。 駅構内に見える駅名の書かれた看板はそう読める。 駅の入口には座り込んだ一人の少女がいた。 時間も10時を回った頃なのでまだまだ都心では喧騒があり活気づいているだろうが、いささかここ青梅は田舎過ぎる。 既に、シンと静まり返った街々は人の声一つ響かない。 更に冬だ。 山に近いこの地域は都心に比べ更に冷え込む。 どうしても、という場合以外まず外に出たがらない。 だが、少女は居た。 身は縮こまり、顔は体育座りをした足に押し付けるかのように埋めて。 家出だった。 今時なら、都心に出れば夜通し騒いでる若者もいるだろうし、友人の家に上がり込む人だっているだろう。 しかし、少女は居た。
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