机の穴

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私が小学生の時に経験した出来事です。修学旅行の班を決める時、Tさんは一人あぶれてしまった。 先生 「は~いみんな注目!、どこかTさん入れてやって下さい~」 クラスのみんな 「え~~」 そう、すでに仲の良い人同士で班はできあがってしまい、Tさんの入る余地は無かったのだ。 教壇の前で一人黙ってうつむきながら立ち尽くすTさん。一番前の席だった私はTさんの方を そ~と見てみた。ぽたぽたと大粒の涙を落としている。更に追い討ちをかけるように 先生 「は~い、決まらないと旅行行けなくなりま~す」 急速にクラスの雰囲気が悪くなってきた。 「Tのせいで帰れないし~」 「ほんと使えない奴~」 もうTさんは今にも倒れそうなくらい真っ青な顔だ。心なしか震えてもいるようだ。 そんな状況が30分ほど続いた。 先生 「今日はここまでにしましょう。みんなTさんの班を考えておくように」 先生が教室から出た後、みんなはTさんに詰め寄った。 「お前なんなんだよ」 「お前がもたもたしてるからみんな迷惑してんだよ!」 次々に罵声が飛ぶ。じっとさっきから直立不同の同じ姿勢でうつむいているTさん。 「もういいや帰ろ!」 みんなが帰り始めてもまだTさんは立ったままだ。私も帰ろうとした時、小さな小さな声が 聞こえてきた。
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