机の穴

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私は並んだワラ人形とTさんの不気味な微笑みが頭から離れず、少しも旅行を楽しめなかった。修学旅行が終わり登校すると、Tさんの机の上に花瓶が置いてあった。 「Tさん死んだんだって」 「マジで!」 「TVみたいに本当に花机に飾るんだ、怖え~」 Tさんは修学旅行当日の朝、自分の部屋で首を吊ったそうだ。 教室はどよめいていた。 が、私はじゃああの時のTさんは一体?などと考えていた。 先生が、 「はい、みんな席に着く!」 席に着いた。これから体育館で全校集会があるとか、誰かに何か聞かれても知らないと 答えなさいとか、そんな話を聞いていた。突然、誰かが 「なんか机に穴が空いてるんだけど」 と言い出した。直ぐに教室中に広まり、俺も、私もと大騒ぎになった。 私はなぜ穴が空いているのか知っていたので黙っていた。 先生 「旅行中に教室でちょっとした工事があってその時の穴です。使いづらい人は 換えるので手を上げて」 何人かが手を上げたが、交換には何日かかかるらしい。 私はなにか現実ではなく夢を見ているような気分でいた。そう簡単に人が死んだり、 ワラ人形が出てきたりするわけが無い。・ ・ ・」 何かが聞こえたような気がした。 耳に全神経を集中して探す。誰かの声のようだ。 どこから?直ぐ近くだ。 ハッとした。私の視線は机の穴にくぎ付けとなった。 恐る恐る耳を穴に近づける。「殺してやる 殺してやる」と小さな小さな声が穴の中から聞こえてきた。
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