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高さは、50メートル以上はあるだろうか…。
海にせり出し、切り立った断崖絶壁に佇む一人の男。
冬の真っ只中、これから死ぬ筈のなのに、断崖絶壁の高さにおののくどころか、やけにこの寒さが達也(タツヤ)は気になっていた。
ふたり笑顔の男女が写る携帯電話の待ち受け画面。
達也はその画面に写る自分自身と、その傍(かたわ)らに写る女性を眺めていた。
達也は心の中でひとり呟(つぶや)いた…。
「今からぼくも逝くよ…可奈(かな)…。」
「きみを決してひとりにはしないって、約束したもんな…。」
穏やかな…そして本当に優しい笑顔になり、携帯電話を強く…強く握り締め、達也は両手を広げ羽ばたく様に宙に身を投げだした。
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