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扉を閉め、暗く水たまりのある裏道を抜けて、華やかな表通りを目指す。
無表情のまま明るい方向へ足を進めれば、暗い両方の壁から一気に視界が開けた。
急に明るくなる視野に目を細めつつ、フランシスは左に曲がりウィンドウ越しにまた歩き出す。
向かうは下宿屋ガーベラ。
馬車が移動するひづめの音と、ショウウィンドウから放たれる灯り。
そしてその間を歩く人々。
活気で溢れるこの街の、“表の住人”
…鬱陶しい…。
『やっ!通して下さい!』
急に女の叫び声が響いた。
「…?」
フランシスは、ふと声のした裏通りへ目をやった。
『踊り子は誰とでも寝るんだろ?なぁ嬢ちゃん、俺達も相手してくれよ。』
先程自分が出てきた裏通りと同じような道で、大柄な男2人の背中が見える。その向こうに女がいるようだ。
『な…何言って…いやぁッ!誰かッ!!』
『おいおい。泣かすなよ~。お前が腕に力入れすぎたんだって。』
片方の男が茶化すように隣の男を小突く。
表通りの通行人は、皆一度見るもののそのまま通り過ぎ…行ってしまう。
男達が大柄だからか…単に面倒事に巻き込まれたくないからか…。
人の流れが耐えない中、フランシスは冷めた目でそれを見ていた。
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