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誰かの手を美しいと感じた。
それはとても白くて、汚れを知らない手。
誰かの手を、綺麗だと感じた。
僕にはない、純粋さが溢れてる手。
どれも普通な掌で、幸せそうだった。
僕の手は、汚れてしまった。
誰かの為になろうと誓った想いでさえ、消えてしまっていた。
気がつけば誰かを助けたつもりが、誰かを傷付けていた。
ただ助けたかっただけだと、自分に偽善を言い聞かせて。
そのうち、僕は気付いた。
誰かを助ければ、誰かを傷付ける。
それは屁理屈で、どうしようもない現実。
だからと言う訳じゃない。
だけど、それでも。
僕は、誰も護れなくなった。
怖くて、怖くて。
誰かに嫌われ、棄てられるのが怖くて。
ただ何も話さず、何もせず。
気がつけば、僕は独りになった。
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