ある魔族の日記

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▲▲月■■日   私が文字を書くのはずいぶん久しぶりのことだ。私は長いこと人と関わらず、考えることをせず生きてきた。   今日、私は救われた。だから、それを記念して日記を書き始めたわけだが、まずは何から救われたのかを書こうと思う。   私は今日、沢山の物と沢山の命を滅ぼした。今振り返れば、なぜあれほどまでに残虐に、力無きモノを殺せたのか理解できない。   私は自我を失いかけていた。そこに現れたのは天使だった。銀の髪を煌めかせ、紫の瞳は真っ直ぐに私を見ていた。   天使は私を茨と自身の魔力で以て捕らえた。私が己を取り戻し、天使に礼を述べると天使は私に罰を与えた。   曰く、「俺の足になれ」と。   天使は魔王だった。私は自身の犯した罪を償う努力をする機会を魔王に与えられた。これを私のものに出来るかどうかは私が決めることだ。   それに…不謹慎だが、あのように美しいものに付き従えるとは、…いや、やはり不謹慎だ。   今日はこのくらいにしておこう。誤字がないことを祈るばかりだ。     
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