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「ねぇ、ちょっと待って!」
そう叫びながら走る少女がいた。
こんな山奥だ。
きっと彼女の呼び掛けに応えるのは1人しかいないだろう。
…しかし、返答はない。
目はもう慣れていると言っても、こんなにも暗く、深緑の闇が周りを覆い尽くしている。
こんな中なら、目なんて邪魔だ。
変に惑わす目なんて。
彼女は瞳を持っている。
普通の人には見えないはずの霊や魔物などが、本人の意志に関係なく見えてしまう瞳。
いわゆる“見鬼の才”だ。
今、彼女が周りを見渡すだけでも、木に登る鬼や彼女をジッと見つめる霊魂などがはっきりと見える。
彼女は一瞬身を震わした。
「どこ行ったの?龍牙、戻って来てぇ!」
これ以上はないと言えるくらいの大声で声を発した。
森中で彼女の声がこだまする。
その声をのせた風に導かれ、彼、少女のいう龍牙は木を渡って少女の元へ駆けて行く。
やっとのことで少女の元へ来られた龍牙はため息混じりで少女を見つめ、話しかけた。
「おまえなぁ、ちゃんと俺についてこいよな…って、李!?」
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