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……嬉しいのだろう。
生まれて初めて自分の故郷を出て、自分の知らない世界を見られることが。
彼女はどんなに夢見てきたか。
不思議な差別により、彼女は友達という友達さえいなかった。
なので出掛けるのは買い物か、技の修行、そして家の裏にあるとっても高い丘。
否、山かもしれない。
どちらにしろ、その3つのどれかの場所だった。
一度、龍牙は聞いたことがある。
いつの日だろうか、夕方よりはまだ早い昼頃、李と丘へ登った。
しばらくは、そこら辺に座って話したり笑ったり、楽しく過ごしていた。
少しして、ふと空を見ると綺麗なオレンジ色に染まり、2人を包んでいた。
李は急に静かになり、座ったまま夕日に照らされて紅く輝いている向かいの山を目を細めながら見つめていた。
どうした?と問えば、
―――あの山の向こう側はどんな所なのかなぁ。私にも友達ができるようなところなのかなぁ。どんな人がいるんだろう。どんなことをしてるんだろう。いつかきっと…あの山の向こうへ私は行きたい…。
そう言って悲しい目をして語った。
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