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その夢が今、現在叶っているのだ。
ここ、“ミストタウン”はあの朱色の輝きの山の向こう側の町だ。
李が願いに願った夢の村…。
「…よかったな。宿がみつかって。」
龍牙は布団に突っ伏しながら言う。
「………うん。」
少し間が開き、小さな小さな聞こえないくらいの小さな声で李は返事をした。
2人とも今は死んだように動かない。
「7時間も歩くなんて…有り得ない…」
なにしろ2人は迷子になり村をさまよい続け、ようやく宿を見つけ出したところだった。
李はブスッとして言葉を発する。
「だいたい、なんでこの村は鶏を野放しにしてるのよ!追い掛けられた時、本当に鶏に喰われるかと思ったわ。」
…そんなことはまず有り得ない。
「鶏が人間喰うかよ…。」
呆れながらそういう龍牙も実は逃げる時、李と同じことを思いながら走っていたのだった。
鶏に追いかけ回され、7時間も歩いた疲れからか、2人は深い眠りに落ちた。
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