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朝露が光る穏やかな朝、まず目を覚ましたのは李だった。
ショボショボとした目を擦り、口を抑えて小さく欠伸をする。
いつもなら「おかーさーん、お腹空いたー」と起きて居間に向かうところだが、今は旅の途中。
母親の輝希もいなければ父親の徳もいない。
隣の布団には、無邪気な寝顔の龍牙が寝ているのだった。
まだあまり太陽は出ておらず少し肌寒かった。
「そろそろ龍牙を起こさないと…」
李は隣で眠っている龍牙を揺さぶり、眠そうに布団に埋もれる彼の耳元で「起きろー!」と叫んでやる。
「うわぁ!?」
龍牙はこの世の終わりとでもいうような叫び声を上げ、布団から飛び上がる。
「あ…あれ、李?親父は?」
「なーに寝ぼけてんのよ!今は旅の途中でしょ。」
「あ…そっか」と寝ぼけ眼に納得した龍牙に「もう…」と呆れたように李は両手を腰に当てる。
寝癖のついた2人の頭を見て、お互い自分の頭を笑い合った。
朝食を済ませた後、2人は荷物をまとめ、宿屋を後にした。
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