9人が本棚に入れています
本棚に追加
◇ ◇ ◇
いつも自分をかばってくれる優しい背中。
けれど、それも永遠に続くわけではない。
いつかきっと、私から離れていくだろう。
私は口を開きかけたが、先に涙が頬をつたってしまい、開くにも開けなくなり、逆に龍牙に気づかれないように声を必死に殺して頬を濡らした。
…きっと、最後には私は独りなんだ。
そう思うと鼻の奥が詰まり、涙が溢れ、止まることを知らない。
前を歩く龍牙の背中が、涙で滲み揺れている。
私はどうしてすぐに泣いてしまうのだろう。
私はどうして邪魔なのだろう。
私はどうして瞳を受け継いでしまったのだろう…。
龍牙が迷うことなく進む中、私は不意に立ち止まった。
私を取り残して、龍牙は気付かず森の闇へと進み、消えていく。
私は地にへたり込んだ。
どうして私がこの旅に出ることになったのだろう。
英雄になるため?
この私が?
そんなの無理よ。
龍牙は充分に強いわ。
私が居なくたっていいじゃない。
逆に、私なんて荷物だわ。
最初のコメントを投稿しよう!