第1章 start of fight

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    もしかしたら、またどこかで泣いているかもしれない。     早く見つけなければ。     そう思った時、林中に絶叫が響き渡った。     “グォォォォー”なんて絶対、大地がひっくり返っても李の叫び声ではない。     だが、龍牙は声がした方向に全力でダッシュし始めた。     (あの叫び声は魔物のものだ。李のように瞳がない俺でもあんなにまで魔物の声が聞こえるなんて余程のことだぜ。)     鼓動が速くなる。     嫌な予感がした。     ドクン、ドクンという大きな音が体中を巡っている。     「李、どこにいる!返事をしろ!」     龍牙は必死で叫ぶ。     しかし返事はなく、密林中をこだまする龍牙の声しか聞こえない。     再び龍牙が走り出そうとする時だった。     ……――ダーッン!     「…!?なんだ!?」     林の西方から、何かを攻撃するような音が龍牙の鼓膜を叩いた。     彼は地を蹴った。     やっと駆けつけた時、龍牙は前の光景を見て背筋がスッと冷えた。     目の前に佇むのは、彼が必死に捜してした少女。     その顔には、いつもの優しい笑顔はなかった。    
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