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魚の腹のように白い肌、虚ろな目、色のない唇。
まるで死人のようだ。
「いったい何が…」
龍牙が小さく呟くと、それの返答がゆっくりと空から降ってきた。
『おや?お前は我が手に落ちた愚かな者の連れ人か。』
「何!?」
少年は辺りを見渡した。
だが、周りは木ばかりで李以外に特に変わったものはない。
こういう時こそ、いつも彼は“瞳”があれば…と毎回思う。
きっと今、龍牙が相手をしているのは“瞳”を持っていないと見えない相手なのだと考えた時だ。
「いてっ!」
龍牙の目の下に赤い直線が引かれた。
「ひ、卑怯だぜ。見えねぇと勝負にならねぇよ。出てきやがれ!それとも、怖くて無理なのかよ?」
少年は軽い笑みを浮かべた。
『よかろう。』
魔物は一言そう告げるとフッ、と姿を現した。
龍牙は魔物の姿を見た今、李がどのような状態なのかを理解した。
彼女は操られているのだ。
霊狐に魂を握られて。
「てめぇ…李をどうするつもりだ。」
ギッと霊狐を睨み付ける。
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