ロシアンルーレット

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俺は何故ここにいるんだろう。 今朝はいつもより早起きで、久し振りにゆっくり朝食を取った。可愛い妻子に見送られ、悠々と会社へ向かった。何の落ち度もない、絵に描いたような幸せな光景だ。それがどうしてこうなったのか。 俺は椅子に座らされている。クッションもついてない、シンプルな木の椅子。椅子は身じろぎする度にギィ、と不満げな声を漏らす。部屋に明かりは裸電球だけ。薄暗いオレンジの光が、目の前をスポットライトのように照らしている。 照らされているのは、これもまたシンプルな木の机。明かりの向こうに、俺と同じように座らされている男が見える。病的な程に痩せた男。見覚えは無い。 男の左右に、体格の良い黒いスーツの屈強な男達が立っている。まるでM.I.Bだ。 どういう訳か首が固定されているのでこちらの左右は確認出来ないが、左右に気配を感じるからこちらも大体同じような状況なのだろう。 痩せた男は憔悴しきっていた。俺も、きっとあんな顔をしている。 机の上に目を落とす。ピンスポットが当たった正方形の舞台のようなその机の真ん中に、恐らく今回の主役だろう物が置かれている。 黒い塊。テレビで見た、逆に言えばテレビでしかお目に掛れないものが置かれていた。拳銃、それもリボルバーだ。弾が横に置かれている。 1発。 これはつまり、そういう事なのだろう。自分の理解力に少し嫌気が差した。目の前の痩せた男は虚ろな目を左右に泳がせていて、拳銃を見ようとしない。 理解しているのかいないのか、それとも理解したくないのか。 誓って言うが、俺はごく平凡なサラリーマンで、犯罪はおろかスピード違反すらした事がない。何かの冗談か、テレビのドッキリかとしか思えない。 こんな悪夢みたいな状況は。
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