ロシアンルーレット

5/5
前へ
/5ページ
次へ
俺は叫んだ。 「そうだ! 俺が生き残った、俺の勝ちだ! さあ早く家へ帰してくれ!」 ああ、早く帰りたい。可愛い妻子のいるあの家へ。 「家へ帰る? 何を言っているのです」 中年男性はそう言って、ぱちんと指を鳴らした。目の前が、白く光った。 突然の光に思わず硬く目を閉じた。しばらく経ってから、ゆっくりと目を開ける。 薄暗かった部屋に白い光が充満している。 狭いと思っていた部屋は、とんでもない広さだった。横にも、縦にも。 周りをぐるりと白い壁が取り囲む。白い壁には、無数の窓。 窓の向こうには、沢山の人がいる。金髪、黒髪、黒人、白人、様々な人、人、人…。 皆共通していることは、身なりが整っている、ということだ。 その様々な人々の狂喜の目が、全てこちらに向けられていた。 目の前に、また銃が置かれた。 黒服の男たちが、椅子に縛り付けられた誰かを運んできた。 「さあ、次はどちらが生き残るか?! 賭けを始めましょう!」 中年男性が窓の向こうへ向かって声を張り上げると、窓の向こうはせわしなく人々が動き、 彼らは次々に手にしたコインをテーブルの上に積み上げていく。 黒服の男がまたリボルバーに弾丸を一発。 これはつまり、そういう事だ。
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加