第二章 「孤高の天才」

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「だから、今月はめっちゃピンチなのよ」  喫茶店Peaceで働く、麗しき華の女子大生トリオの一人である佳乃は、帰宅して来た秋の横に座ると、業務中にも関わらず仕様もない話を始めた。  そんな二人を見ていた薫は、佳乃を注意しようとしたのだが、秋の異変に気が付いた。 「やっぱりミホは……って聞いてるのか~」  ようやく自分の話が秋に伝わっていないと分かり、佳乃は秋の肩を揺さぶるがそれに合わせて小さく動くだけで、秋からのリアクションは皆無である。 「ほら佳乃、これ運んで」  薫はコーヒーとサンドイッチが乗せられたトレーを、秋に絡む佳乃に渡すが、今のところそんな注文は来ていない。  そもそもこの夕方という時間帯には珍しく、喫茶店Peaceの主だった客層である女学生や帰宅途中のOLさんが来ないので、暇を持て余した所に秋が帰って来たので、佳乃はまっこと致し方なく、シメシメと絡んだのだ。 「あれ、薫さん。これは?」 「運んで?」 「……ヨロコンデ」  文字数にして三文字だが、まるで見えない圧力……そうギアス(店長権限)という圧倒的な力がその三文字には発生していた。  薫の店長権限に脆くも屈した佳乃は、すごすごとミホが横に立つ窓際のテーブルに移った。
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