第四章「剣舞銃奏」

26/26
前へ
/190ページ
次へ
「それで君はどうするつもりなの?」  ターゲットである秋はもちろんながら、助けに入ったジーナも相手に面が割れている隠密行動は難しい。そうなると相手の出方を待つ後手後手にならざるを得ない。 「……依頼主を狙うのはどうですか?」  秋の一言にセンセーは愉快そうに笑うと、薫は話についていけないのかポカンとしている。 「殺し屋だってビジネスなわけですから、報酬が出なければ働く理由はなくなりますよね」  よっぽどのもの好きでもないかぎり、タダ働きを進んでする人はいないだろう。 「まるで君は相手を知ってるような口ぶりだな」  察しのいいセンセーの言葉に秋は苦笑いを浮かべる。 「はい。実は心当たりがあるんですよ」  神崎綾との一件で関わり、警察であり薫の兄である八雲からも忠告され、海外から殺し屋を雇うほどの経済力と行動力があるのは威龍会しか考えられない。  しかし腑に落ちない点がいくつかある。  直系の組員がやられたのだから仕返しするのは分かるが、常識的に考えて命を狙うのはいささかやりすぎであり、相手が高校生なのだから大人気無い感は否めない。  いくらメンツが大事とは言え、逆にメンツを汚しかねない。 「こうなったら直接訊くしかないか」  体の調子が戻りだしたのか、秋は立ち上がると体を伸ばす。 「ちょっと、秋! どうする気?」 「八雲さんに最近ガサ入れした威龍会系の事務所を訊いて、ちょっと暴れようかなと」  聞いた自分がバカだったと、薫は額に手を当てて天を仰ぐ。 「止めた所で意味がない事は君が一番知ってるだろ?」  センセーは諦めろと薫の肩を叩く。 「あーもう。あーもう! 分かったわよ。こうなったら戦争よ。なんだったら実家に電話しようか!?」 「いや、薫姉さんは実家とは絶縁状態ですよね」  その原因になっている理由に自分が含まれていると思うと、秋はとても申し訳なく思う。 「家族仲が悪いだけでグループには電話できるもん」 「いや、本当にいいですから」  薫の実家を頼るのは本当に困った時であり、今はまだその時ではない。 「三神君、私も行く」  今まで黙っていたジーナは静かにそう言う。 「英語教師には荷が重いですよ?」 「学生の君には言われたくないな」
/190ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9184人が本棚に入れています
本棚に追加