第四章「剣舞銃奏」

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 このご時世に『用心棒』との言い回しに、凜は素直に大空組は面白いと思った。  戦闘狂の嫌いはあるが、学校が違うとは言え朧は後輩である。 (三神君ならどうするだろうか?)  もしこの場に居るのが秋ならば、用心棒という申し出を断った上で、こっそりと粛々に朧を護だろう。 (私にはそんな器用な事は無理だな。そもそも三神君の様にやる必要も無いか)  今回の一件は美咲から凜に依頼されたので、やり方は全て凜の一存で決まる。 「用心棒……引き受けます」  凜の言葉に鹿之助は鷹揚に頷く。 「それじゃあ先生、朧共々よろしくお願いします」 「あの、先生はちょっと……」 「いいや、ここは譲れねえなぁ。用心棒と言えば先生ってのが相場は決まってんだ」  凜は困ったように朧へ目を向けるも、彼女は用心棒が不満なのか小さく口を尖らせている。  組員は親の言葉に逆らうわけもなく「先生だ」などと口々に言う。 「満場一致だな。それじゃあお開きってね」  上座に座っていた鹿之助はよっこらせと立ち上がる。 「お、そうだ。奴さんが挑発しても乗るなよ? 戦争なんざアホくせえからな」  そう言って快活に笑うと、そのまま出て行った。 (さて、私の方は上手く近づけたが……三神君はどうしているかな……)
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