第四章「剣舞銃奏」

14/26
前へ
/190ページ
次へ
ーside 秋  英語教諭のキャサリンから手を引く様に忠告された翌日、秋はいつも通りの時間に学校へ行くのだが、その途中でふと立ち止まるとそっと振り向いた。  つけられている感覚に近いのだが、背後にはそれらしい人物は見当たらない。  しかし依然として首筋がぞわぞわする奇妙な感覚が無くならない。  見られている。漠然とそんな気がするのだが、秋は現在進行形で移動しているにも関わらず、その感覚も付き纏っている。  もし観察者がいるとすれば一緒に移動しているはずなのだが、尾行している人や車は無い。  このまま普段通りの表道を行けば学校へ付くのだが、どうも嫌な予感がした秋はそっと横道に入った。  徒歩で学校へ行くには三通りのルートがあり、学校・商店街・駅前と繋がる表通りが普段の通学路であり、秋が入ったルートはその裏道である。最終的には校門から入るのだが、裏道のルートは車が入れない様な細道や、一軒家やビルのおかげで微妙に入り組んでいる。  もう一つのルートが学校の裏手まで回り込むルートで完全に遠回りであり、旧校舎側の塀から忍び込む形になるので普段は使えない。  遅刻覚悟で裏道に入ってしばらく進むのだが、どうやら巻く事に成功したのか視線を感じない。  もし威龍会絡みならば人気のない裏道へ入った所で急襲されそうものだが、そういった荒事のアクションが無いのでそうともいいきれない。 「プロ……殺し屋、か?」  大空組を狙うならありえるが、暴力団がたかが高校生に殺し屋を雇うとは考え難い。  だが八雲から忠告もされているので、鼻で笑う程に楽観も出来ない。 (さてさて……どうしたものか)  ポケットから飴を取り出すと、そっとそれを口に放り込んだ。  尾行もしくは観察をされた可能性は高く、それはつまり狙われているという事である。
/190ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9184人が本棚に入れています
本棚に追加