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誰もいない事を確認してから旧校舎側のフェンスを越えると、秋はやっと一息ついた。
そのままさりげなく登校する生徒の中に入り込み、玄関を通り抜けた所で背後から肩を叩かれた。
「おはよ。ってどうしたのよ? 朝からそんな真剣な顔して」
振り向くとそこにはクラスメートである美鶴がいた。
「おはよう。英語の宿題を忘れたからどうしようかと思ってたんだよ」
すぐに表情を和らげると、そんな事を言いながら上履きに履き替える。
もちろん宿題は終わらせてある。
「うわ、今日はキャサリン先生の日じゃん、こりゃあ辱められるわね」
「だよね。みんなの前で延々と英文朗読とか……って事で三条さんに頼みがあるんだけど」
「残念だけどその頼みには答えられないわ」
上履きを履き替えた満は自嘲気味な笑みを浮かべた。
「私もやってないからね」
同士がいて開き直ったのか美鶴は言い終えて笑う。
「あ、ちなみに雪のノートは私が予約したから、秋は楓とかに見せてもらえばいいんじゃない? 気が向いたら私のでもいいけどね」
「いやいや、いつ予約したんだよ」
「今からするのよ」
美鶴は笑みを浮かべると、短いスカートなんのそのと廊下を走り出した途端に小早川先生に注意された。
真面目な先生による真面目な説教を受けている美鶴の横を通り過ぎると、美鶴は悔しそうに秋を睨んだ。
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