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教室内の一等地と言えば窓際なのだが、社会に出ればそこは崖っぷちになるのだから不思議である。
更に上等な場所が最後尾であり、そこが秋の席となっている。
日当たり良好でいて、クラスの様子も一望できたりもする。
秋は今日の時間割を確認すると、キャサリンの英語は四限となっていた。
隔週で外国人教諭の授業になるのだが、どういうわけだかこのタイミングで彼女の授業なのだから困ってしまう。
このままだと盛大なため息をついてしまうので、秋はポケットに手を入れるとタブレットミント菓子を掴むと適当に口へ放った。
「よくも見捨ててくれたわねー」
教室に入ってくるやいなや、美鶴はクラスメートへの挨拶もそこそこに秋へと詰め寄る。
「あれは自爆だったと思うんだが」
「へー、あっそ。そういう事を言っちゃうんだ」
美鶴はそう言い残すと、既に登校していた佐久間雪の席へ近づいた。
「雪、三神が英語の宿題を忘れたらしいけど、助けちゃダメよ」
「え? え?」
突然の事に名前の様に白い髪をした少女は、困惑した表情を秋へ送る。
「佐久間さん、三条さんも宿題を忘れたらしいから、彼女の為にもノートは見せない方がいいよ」
「え? え?」
今度は秋にそう言われてしまい、雪は小動物の様に美鶴と秋を何度も見る。
「ちょっと、三神君……どういう事かしら?」
「あ、三条には悪いが、宿題やってあるから」
「はあ!? 騙したの?」
「あ、ちょっと用事が……」
秋はわざとらしく席を立つと、そのまま廊下へと逃げ出す。
何だかんだで学校は面白い。そう思うと、秋は登校の視線を思い出して気を引き締めた。
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