第四章「剣舞銃奏」

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 着弾点を考えると相手は手を狙っていた事になるのだが、そうなるとこの攻撃は警告なのだろう。  とはいえ弾道など風向き一つで容易に変化してしまう。もし突風が起こっていれば別の誰かに命中していたかもしれない。  白昼堂々と狙撃されるなど誰も思わないだろう。秋自身も一発を避けたのは奇跡に近い。そんな普段通りの授業が続けられる中で、もう一人だけ顔色の違う人物がいた。 「……自習にシマス」  口元には笑が見える。キャサリンはそれ以上の言葉はなく足早に教室を去っていくのだが、秋の目に映る彼女の瞳は普通とは程遠い。  授業の半分以上を残しての自習に教室は沸き立つのだが、その温度を下げない様に秋はこっそりと教室を抜け出す。  そして走る。  授業中という事もありそれを咎める者はいない。  狙撃場所は学園から約600メートル先に建てられた雑居ビルの屋上。  秋の教室を狙うならばそこ以外は考えられない。  二発目が無かった事を考えるとボルトアクションかもしれないが、それでもカーテンを閉めた後にもう一発撃てたにも関わらず相手は撃たなかった。  机に乗せられた手を狙う程の腕前を考えるに、外す事を嫌がったのだろう。  それで別の誰かが傷つけば、それはそのまま射手の価値に直結する。  警告を与えるのならば教室の窓を蜂の巣にするだけでも効果は抜群なのだが、それをしなかったのは単にクライアントの要望なのかもしれない。 (それにしてもこれはやりすぎだ)  相手がプロならばもう屋上に行っても姿はないかもしれないが、それでも行かずにはいられない。 
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