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校庭で体育に励む生徒に見つからない様に、旧校舎へ回り込むとそのまま塀を乗り越える。
ガードレールに守られた学校裏手の歩道に降り立った秋は、その足を狙撃地点と思しき建物に向けた。
暇な時に窓から眺めていたのが件のマンションであり、まさかそこへ足を運ぶことになるとは思っていなかった。
目測で約600mの距離があるのだが、射角はそれほど広くはない。郊外の学校ならまだしも、これでもギリギリ都内であり学校の周辺にはそれなりに建造物があったりもする。
なので屋上からの攻撃はほぼ無い事が推測出来るので、秋は走るスピードを落とすことなくマンションへ向かう。
あと少しで玄関ホールに到達出来るという距離。
歩道を走っていた秋は路肩に停車している一台のバンが目に止まった。
窓ガラスはスモークが掛けられているが、なんの事はない普通の車。
その横を通り過ぎようとした瞬間、その扉が開いたと思うとそこから足が飛び出した。
それは下車する為の行為ではなく、明らかに攻撃の意思が乗った蹴りであり、秋は咄嗟に腕を交差させてそれをガードした。
攻撃を防ぐ事は出来たものの、態勢が整っていない中での急襲に秋はそのままフェンスに背中を打ち付けた。
「うっそ! あのタイミングで避けちゃうの!?」
そのおちゃらけた様な声は女性のものであり、秋は睨むようにその姿を捉えた。
金髪はポニーテールの様に云われ、その見事なまでに整ったプロポーションを殺すかの如く、その身にまとったTシャツには東京万歳の文字がデカデカとプリントされていた。
「さっさと片付けて」
車内から聞こえてきた声は運転手だろうか。その言葉から彼女らが敵だという事は明確であり、秋は歯を食いしばると反撃に打って出た。
ガードレールに手を着くと、そのまま乗り越える様に蹴りを繰り出す。
金髪の女はそれを軽々と避けるのだが、秋はそのまま足がバンの扉に触れると、蹴ってそれを閉める。と同時に金髪女性の顔面への攻撃も狙う。
「っと、危ない」
口ではそう言いながらも女は上体を逸らして避けると、二歩程バックステップする。
「なるほどなるほど、確かに君は厄介な高校生だ」
「白昼堂々狙撃する方が厄介だろ」
秋はそう言うと、目の前の敵に意識を集中させた。
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