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火薬の炸裂音が響く。
一瞬、自分の頭が打ち抜かれたと錯覚したが、認識上では音速と同時に車のサイドミラーが吹き飛んだ。
秋は考えるよりも先に頭を後ろに引く。
その直後にパシュっとガスの抜ける噴射音と同時に、目視できない何かが通過した。
時間にしてみれば一秒弱の出来事だが、秋の体感時間は何倍にも膨れ上がっていた。
本来ならば走馬灯を見る刹那の時間を銃弾回避に費やし、本日二度目の凶弾を避ける。
しかし間もなく顔面に激しい痛みと衝撃が走り、いいところを殴られたせいで足に力が入らずそのまま尻餅をついてしまう。
金髪の女は秋を一瞥して黒塗りのバンに乗り込むと、それと同時に急発進して走り去っていった。
車のナンバーを見るもご丁寧に外されている。最初から乗り捨てるつもりなのだろう。
尻餅をついていた秋はそのまま地面に横たわると、サイドミラーを打ち抜いた人物が顔を覗き込んできた。
「まだ、生きてるわよね」
今度は同じ金髪でも見慣れた顔が目に入る。
「さっき撃ったのはアンタか?」
「そうよ、危機一髪だったわね。ってそうじゃなくて、死ぬところだったのよ!? なんで冷静なのよ」
「そんなのはどうでもいいだろ。それより銃声は大丈夫なのか?」
「……大丈夫よ。銃社会化してないから誰も銃声だって気にしないわ」
「そうか、それじゃあ」
秋は体を起こして立ち上がると、殴られた頬を摩る。
「そろそろアンタの正体を教えてもらおうか? 銃まで持ち出してるんだ。言い訳する気じゃないよな」
秋のただならぬ眼光にキャサリンは息を詰まらせると、観念したのか渋々と頷いた。
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