第二章 「孤高の天才」

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 秋に事情を聞く体制が整い、薫は何があったのか問い掛けた。 「トワ……久遠永久が転入して来た」  珍しく口ごもった秋の言葉に、薫はなるほどと頷いた。  薫自身は久遠永久と面識は無いが、彼女の存在があったからこそ今の秋がいるという事は知っている。 「そっか……何か話した?」  秋はその問いに首を振る。 「いや、今日は転入初日だから助かった」  転入生に興味が集中するのは常であり、それが女子だという事もあり、クラスの女子はこぞって永久の事を知りたがった。  男子こそアグレッシブになりそうだが、こういうイベントは同性の方が盛り上がるのである。 「で、秋はどうする?」 「……関わらないようにしようと思う。一度泣かしてるから、合わせる顔が無い」  秋はそう言うと立ち上がり、カウンターに入ると扉を開けて階段を上って行った。  それを見計らって佳乃は薫に詰め寄る。 「何かあったんですか? とっても興味ありまくりますよ」  佳乃はニシシと笑う。 「そうねー。しいて言うなら、秋の元カノが転入して来て、同じクラスになったって事かしら」 「「ええー!!」」  何故か声がユニゾンしており、声を上げた一人として佳乃は何事かと辺りを見回す。  すると理恵と目が合う。  佳乃の口元が、獲物を見つけたとばかりに、ニヤリと笑みを浮かべた。
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